考えるって、案外楽しい。

博物館で学ぶ大学院ゼミ – Wilhelmshöhe Museum & Hesseisches Landesmuseum in Kassel での特別授業に行ってきた

    
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博物館で学ぶ大学院ゼミ – Wilhelmshöhe Museum & ...

ペコ
ペコ
Guten Tag!ドイツでママ大学院生をやっているWebライターのあさひなペコです!

すごく今更なのですが、自分への備忘録もかねて、2024年夏学期に受講した博物館での授業について記録を残しておこうと思います。

ペコが受けた授業2つでは、カッセルのHKH (Hessen Kassel Heritage)の美術館ディレクターと、古代史の専門家で、どうやらカッセル大学の名誉教授の先生が直接レクチャーをしてくれるという貴重な機会がありました。

また、開催直前だったプレイモービル展や、ディレクター自身が手掛けた特別展の裏側にも触れることができました。

この記事では、その学びの内容を紹介します。

博物館を舞台にした学びとは?

カッセルには、世界的に有名な美術館や博物館が点在しており、文化・歴史研究の分野では非常に恵まれた環境です。私が参加しているゼミでは、実際に博物館を舞台に、展示を批判的思考の視点から見直す特別授業が行われています。

ペコが現在通っている修士課程「歴史と公共(Geschichite und Öffentlichkeit)」では、地元カッセルの博物館を管理するHKH(Hessen Kassel Heritage)と協力して、美術ディレクターやそこに勤務する教授とともに、博物館で受講する授業があるのです!

ゼミの主な舞台:Wilhelmshöhe Museum & Hesseisches Landesmuseum in Kassel

今回のゼミの舞台は、カッセルを代表するWilhelmshöhe Museum(ヴィルヘルムスヘーエ美術館)のほか、Hesseisches Landesmuseum in Kassel(カッセル州立博物館)などなど。

ペコは残念ながら、当時妊娠中だったこともあり、途中で授業を離脱してしまったのですが、Ottoneum(オットニウム)にも行く機会があったみたい!

行きたかったなぁ。

Wilhelmshöhe Museum(ヴィルヘルムスヘーエ美術館)とは?

カッセルの象徴的なスポットであるヴィルヘルムスヘーエ宮殿内にある美術館で、レンブラントやルーベンスなどのバロック絵画コレクションが充実しています。

ここでは、芸術作品がどのように展示され、どのように観客へメッセージを伝えているのかを分析する授業が行われました。

ペコ
ペコ
責任者はなんとHKAの芸術ディレクター(ボス)と、古代史ブースの責任者である教授!芸術ディレクターさんの授業は妊娠中ということもあり、教授の計らいでゲスト参加してきました!
古代史の先生の方は、課題提出をメチャクチャ伸ばしてくれました。2人ともめちゃいい人だったなぁ

Hesseisches Landesmuseum in Kassel(カッセル州立博物館)とは?

考古学、歴史、民俗学を中心に扱う博物館で、古代メソポタミアの遺物から近代の文化史まで幅広く展示されています。今回は、古代史エリアの専門家によるレクチャーを受け、展示の意図や、歴史の解釈がどのように変遷してきたのかを学びました。

ペコ
ペコ
ゼミだけで5回以上は訪問していたので、受付のおばちゃんたちに顔を覚えられました( ´艸`)

授業の内容:展示を批判的視点から見直す

このゼミでは、単に展示を見るのではなく、以下のような視点から展示の意義や問題点を議論しました。

(といっても初めての授業だったのでヒヨッテて、ほぼ聞く専^^;)

1. 展示のコンテクストはどのように構築されているか?

  • 「この作品がここに展示されている意味は?」

  • 「なぜ特定のアーティストや時代が強調されているのか?」

  • 「観客はどのような印象を持つように誘導されているのか?」

例えば、展示のキュレーションが、無意識のうちに西洋中心的な歴史観を強調してしまう危険性があるという点。

今まで作品を見ても、そんなことには気づかずに「へー、ふーん」レベルで作品を鑑賞していましたが、こんなところに議論の余地があったとはと気づかされました。

2. 歴史的・文化的背景の影響

Hesseisches Landesmuseumでは、古代史のエリアを担当する教授の解説を受けながら、考古学展示の「物語の作り方」を分析しました。

  • 出土品がどのような歴史的背景を持ち、どのように博物館で再解釈されているか

  • 過去の展示と現代の展示で、視点の違いがあるか?

教授が自分たちの展示に命かけているのがとても印象的でした。

展示の目的や意図を直接業務に携わっているおっさんたち、まるで少年のようだったなぁ。

プレイモービル展と特別展の裏側 – 博物館の展示制作のプロセス

ボス教授のゼミの特別な機会として、開催直前のプレイモービル展や、ディレクターの先生が手掛けた特別展の準備過程を見学することができました。

1. プレイモービル展の開催準備

プレイモービル(Playmobil)は、ドイツ生まれの人気玩具シリーズで、今回の展示では歴史的なテーマをプレイモービルのフィギュアを使って再現する試みがなされていました。

  • 展示のコンセプトは、「遊びを通じて歴史を学ぶ」

  • プレイモービルのジオラマを使いながら、子どもでも理解しやすいストーリーテリングの工夫が施されていた

ここでは、「エンターテイメントと教育のバランスをどう取るか?」という点が議論されました。歴史的な正確性を保ちつつ、親しみやすい展示を作ることの難しさを実感しました。

その後、個人的にプレイモービル展に行ったので、その内容を寄稿させていただいています。

2. ディレクターによる特別展の設計プロセス

また、HKHの美術館ディレクターが手掛けた特別展の準備にも立ち会うことができました。

  • 展示作品の選定基準

  • 照明や配置による「作品の見え方」の工夫

  • 観客の動線を考えたレイアウト

普段は見ることのできない、展示が完成するまでの舞台裏を知ることで、博物館の展示が単なる「並べる作業」ではなく、緻密な戦略のもとに設計されていることを学びました。

博物館は「展示されたものを見る場所」ではなく、「展示そのものを考える場所」だった

今回のゼミを通じて、博物館は単なる「学びの場」ではなく、歴史や文化がどのように再構築され、どのように私たちに提示されているのかを批判的に考える場であることを実感しました。

  • Wilhelmshöhe MuseumとHesseisches Landesmuseumでの授業を通じて、展示の背景を深く理解できた

  • プレイモービル展や特別展の制作過程を見学し、展示がどのように作られていくかを学べた

  • 博物館の展示は「完成されたもの」ではなく、時代や視点によって変化し続けるものである

今後、博物館を訪れるときは、単に展示を鑑賞するのではなく、「この展示はどのように作られたのか?」という視点を持つことが大切だと感じました。博物館は、過去を学ぶだけでなく、未来の学び方を考える場でもあるのです。

2025年の夏学期は、古代史ブース責任者の教授(仏)の授業にまた参加してきます!

テーマは壺の絵画とのことで、古代ギリシャ時代はゲームレベルの私がどこまでついていけるか(;^ω^)

ま、なんとかなるでしょ。

ということで、最後まで読んでくれてありがとダンケ!

あさひなペコ

    

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